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中公新書「大平正芳」 [歴史本]

大平正芳が亡くなって今年で30年、70歳で亡くなっていますので、今年は生誕100年ということになります。

この本は2008年の暮れに出版されていますので、比較的新しい本だと思います。著者は福永文夫です。

昨年亡くなった田英夫元参議院議員が、昔の首相(当然自民党の首相を指しますが)は考えがものすごく深かった、とテレビのインタビューで生前語っていましたが、その中に恐らくはこの大平も含まれるのだろうと思いながら、この本を読みました。

大平政権について世間で語られることは現在殆どありませんが、私が大平元首相について頭に残っていることといったら、
・自民党総裁予備選で、福田赴夫有利という大方の予想を覆し第一位となり、そのまま首相就任
・一般消費税導入を総選挙で訴えて過半数割れの大敗
・選挙後首相指名を誰にするかで自民党内が大もめにもめた40日抗争
・野党提出の大平内閣不信任案に対して自民党非主流派が欠席し、可決され衆議院解散
・選挙期間中に入院しそのまま死去
というあたりでしょうか。

これらに関することもこの本には色々と記されていますが、むしろ首相になるまでの間について、半分以上のページが割かれています。

大平というと、三木武夫、田中角栄、福田赴夫と並んで三角大福と呼ばれていますが、三木や福田が大平より裕福な育ちだったというのは、この本で初めて知りました。

また、岸信介とはそりが合わなかったようで、岸についてはただ単に同じ政党に属している人としてしか大平は見ておらず、非常に冷ややかなスタンスを取っていたことも、この本からわかります。

政治の世界で「日米同盟」というのが強調され始めたのは、中曽根政権の頃だったように思いますが、日米関係について「同盟」という言葉を最初に使ったのは、大平政権だったということも、この本には記されています。大平というと、吉田茂や池田勇人の直系のいわゆる保守本流で、軽武装経済優先主義のイメージが強かっただけに、このことはちょっと意外でした。

更には、大平政権時代、民間人を登用して9つの政策研究会を政府内に立ち上げていることも記されています。「地球社会の時代」「文化の時代」「地方の時代」への対応がその狙いだったようです。いずれもリーマンショック後の現代にも通じる課題であり、その先見性は注目に値するところです。故田英夫議員のいうところの「昔の首相は考えが深かった」というのは、この辺にもだぶってくる話なのかも知れません。

この政策研究会には大平の意向で、21世紀に第一線で活躍することのできる、当時30代から40代の人たちが中心に選ばれています。この本の末尾に、そのメンバーの一覧が載っていますが、阿木燿子や橋田寿賀子、榊原英資、佐々淳行、曾野綾子、野口悠紀雄、浅利慶太、小松左京、渡部昇一、桐島洋子、西部邁など、現在も各界で活動している人たちが多く含まれています。

大平の急死もあって、存命中に報告書を提出できたのは、3つのグループにとどまりました。政権の後半は政争に翻弄され、わずか2年足らずで大平内閣は消滅してしまったため、これらの成果がその後十分に生かされたのかどうかは、よくわかりません。

大平は政治家としての多忙な日々の中、多くの著作も残しています。それらにも少し興味が湧いてくるような一冊でした。


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