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「メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故」 大鹿靖明著 講談社文庫 [その他書籍]

東日本大震災の福島第一原発で何が起きたのか、そしてその後東京電力や官僚がどう動いたのかを、詳しく知ることのできる、とてもよい一冊です。

文庫本にしては分厚く、600ページ以上もありますが、それだけ念入りに調査・取材された結果がここに凝縮されていて、読みごたえがあります。


この本を読んで、私がまず率直に感じたこととしては、
①当時のメディアの報道が、いかにいい加減であったか
②東京電力のどうしようもなさもさることながら、経済産業省もそれに劣らず相当悪質だ
という2点に集約されます。

①については、
・日本テレビが福島第一原発の爆発をテレビで伝えたのが、その事実を知ってから1時間後であったことについて、日本テレビ自身がその後今日に至るまで、その是非について何の検証も行っていない。
・海水注入の中断を当時の政権が指示したのではないかと疑われている件は、実際は官邸内に詰めていた東電幹部が、場の空気を(勝手に)おもんばかって判断したものだった。
・鉢呂経済産業相の辞任のきっかけとなった、放射能云々についての発言が、各社全くバラバラであり、何が本当かわからないだけでなく、それを真っ先に報じたのが、その場にいなかった報道機関(産経)だった。
・原発事故後のエネルギー政策の方向性について、将来的な原発ゼロを打ち出したい首相官邸と、原発推進の姿勢を変えたくない経済産業省との間の暗闘について、メディアは殆ど報じていないどころか、ろくに裏も取らずに官僚の巧妙な誘導に安易に踊らされる報道も多かった。
など、メディアの調査報道力の衰えぶりが随所に感じられます。

②については、
・経済産業省内の電力自由化論者や発送電分離推進派が、事故当時にはことごとく左遷されていた状態だった。
・原発に関する世論がどうであろうとお構いなしに、自分たちの権益・利害だけを考えて、官僚たちはひたすら突き進んでいる。
・省として原発推進の旗は降ろさないという唯我独尊ぶりの最たるものが、原発の「やらせ」説明会。
・原発政策見直しのための審議会や検討会に関して、自分たちに都合のよい人選をゴリ押しして、しばしば大臣や官邸ともめるどころか、時には無視してまで突き進もうとしている。
こんな調子なので、経済産業省の役人が一体誰のために働いているのか、よくわからなくなります。


そして、この本について、私の中で一番強く印象に残ったのは、ペーパーテストの点数で積み重ねてきたエリートの知識・能力というのは、こういう想定外、不測の事態では殆ど何も役に立たない、ということでした。

それが、この前代未聞の大事故で、一気に露呈した感じがします。ただ右往左往するだけで、打つべき対策を何も提案できない、東京電力や原子力安全保安院のトップエリートたちは、その最たるものだったと思います。

私自身も、彼らエリートには全然足元にも及ばない存在ではありますが、いわゆる世間でいうところの進学校とよばれる高校に通い、たまたま多少ペーパーテストの点がよかっただけで、大学に進学できた人間です。社会に出てからは、人間としての生きる力、考える力がいささか足りないのではと思う場面もしばしばあります。

小中学生の一斉学力テストの点数に一喜一憂したり大騒ぎする県知事さんも一部にいたりしますが、そういう人たちにもよく考えてもらいたい、そんな一冊ともいえます。


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タグ:原発
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