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「大相撲改革論」 武田頼政著 廣済堂新書 [相撲本]

かつて週刊現代で朝青龍の八百長を糾弾したフリージャーナリストの著書です。大相撲の八百長メール事件の発覚後、2011年秋に出版されています。

力士のみならず親方衆、相撲協会、そして相撲記者たちの堕落、劣化の積み重ねが八百長メール事件を生み、そして現在に至っているということが、この本ではかなり丁寧に書かれています。

また、この本に書かれている「八百長シャンパンタワー理論」は、まさに大相撲の八百長の構造をわかりやすく示したもので、大相撲と他のスポーツの八百長が根本的に違うということも、これを読むとよくわかります。簡単に例えると、横綱の八百長によって流れる資金が、番付が下の者に順次流れて行って、全体に行きわたるようになって、皆が潤う、という話です。

そして、大相撲の八百長に対して、見て見ぬふりをしてきた相撲報道の堕落・劣化ぶりも、この本の中で指摘されています。

これは相撲記者に限らず、政権とズブズブのメディア幹部や政治記者にも言えることかも知れませんが。

私はこの本を読む前から、相撲記者で八百長の噂を全く耳にしたことがないというのは、いい加減に取材をしていたのかと思われても仕方がない話であり、また八百長を知っていて報じないというのは、癒着していると言われても仕方がない有様であり、どっちに転んでも相撲記者はどうしようもない存在に陥っている、と思っていましたが、この本を一読して、その認識が改めて強くなりました。


ところで、朝青龍時代に八百長が目に余るほど横行してしまった原因として、この本では次の2つのことが挙げられています。
①懸賞金は「一番につき1社1本」という制限の撤廃
②公傷制度の廃止

少しわかりやすく補足すると、
①によって、一つの取組に対する懸賞金の額が飛躍的に上がってしまい、それが八百長の潤沢な資金源となってしまった。
②によって、従来なら本場所の取組で怪我をして休場しても、番付の降下が1場所猶予されていたのが、公傷制度の撤廃により、ガチンコ相撲によって怪我をした場合の保障がなくなってしまい、休場=番付降下に直結する状況となり、力士にとっては非常に酷な状況を生み出した。
ということになります。

私は少なくとも、公傷制度は今すぐにでも復活、いや従来よりも拡充させた制度を構築すべきと考えます。番付を一定期間保障する代わりに、ノーワーク・ノーペイの労働法的な考え方を採り入れて、公傷適用期間は無給扱いにするという方法でもいいと思います。


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「嫌いなことでも好きになれる」 魁皇博之著 徳間書店 [相撲本]

大相撲の元大関魁皇(現浅香山親方)が引退した2011年に出した本です。

この本は、「嫌いなことでも好きになれる」かどうかについては、私が読んだ限りそれほど説得力は感じられませんでしたが、魁皇の大相撲入門前から引退後に至る土俵人生を振り返る一冊となっています。

魁皇自身が最初は相撲が好きではなくて、一度は相撲部屋から脱走を試みたりしたことは、魁皇ファンにはよく知られているかと思います。そういったことから付けられたタイトルだろうと思います。

引退会見の際に魁皇本人が挙げた「思い出の一番」である、大関昇進前、2000年初場所の武双山戦のことも、まえがきに真っ先に書かれています。あの会見の通り、消極的な相撲で惨敗してから、相撲に対する取り組み方を変えたことなどが、本文にも色々と記されています。

また、魁皇の現役時代の晩年は、大相撲に不祥事が立て続けに起こった時期でしたが、この時に魁皇がいなかったら、大相撲は更にとんでもない方向に進んでしまったのではないかとも、この本からは感じさせられます。

ちなみに魁皇の引退会見はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=O3TkwoRbg84

それにしても、ワードの変換で「魁皇」が一発で出るあたりは、さすが優勝5回の最強大関です。


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タグ:大相撲 大関
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新版「週刊ポスト」は大相撲八百長をこう報じてきた 「週刊ポスト」編集部・編 小学館新書 [相撲本]

大相撲の八百長を知る入門書のような一冊です。

内容は、八百長相撲追及の本家本元・週刊ポストの過去の報道がまとめられた、ダイジェスト版のような形になっています。2011年2月に発覚した大相撲八百長メール事件の翌月に緊急出版されています。

週刊ポスト編集部は2000年5月にも、「週刊ポストは『八百長』をこう報じてきた」(小学館文庫)を出版していますが、今回の本はその内容に序章を新たに加え、新書版として再構成されています。

私が以前勝手に名付けた「八百長三部作」(「八百長」元大鳴戸親方著、「中盆」元小結板井著、「週刊ポストは『八百長』をこう報じてきた」週刊ポスト編集部・編)のうちの1冊が、この八百長メール事件を受けて、リニューアルされた格好です。

ただし、今回の新書版が出た段階では、まだ八百長力士の処分が決定されていませんでしたので、八百長メール事件そのものについての具体的な事実には、殆ど触れられていません。その点がちょっと残念ではありますが、1980年の元十両・四季の花の証言以来、他誌の追随を許さない徹底した取材・追及ぶりが、この一冊に凝縮されています。

目次の後にいきなり「『八百長』を知る基礎用語」なるものが4ページにわたって書かれており、八百長用語のみならず、相撲の基礎知識も補完できるようになっています。八百長用語に関しては、「注射」「ガチンコ」「中盆」この3つが基本かなと思います。


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「親方はつらいよ」 高砂浦五郎著 文春新書 [相撲本]

大相撲の高砂親方(元大関朝潮)の書いた本です。

2008年7月の出版ですので、朝青龍サッカー騒動(朝青龍が巡業を休場しながらモンゴルでサッカーをして、2場所出場停止処分になった事件)の翌年に世に出たものです。したがって、朝青龍が暴行事件を起こし引退した2010年1月よりも前に書かれています。

当時の騒動のみならず、親方としての弟子に接する心得や自らの相撲人生についての内容も含まれています。高砂部屋伝統の明るく個性的な雰囲気を親方自身も継承し大事にしている様子が感じ取れます。

また相撲協会の広報部長だった頃の印象などを思い起こせば、この親方がそれなりに相当な能力を持った人であることは確かなのだろうとも思います。

当時の騒動については、「肌がツルツル」「虹のダブルアーチ」発言の真相についても触れられています。当時の報道では、「弟子がこれだけ重大な事件を起こしていながら、実にお気楽な親方」という文脈でこの発言が報道されていましたが、この本によれば、それはマスコミが親方の一部の発言だけを面白おかしく取り上げたものだ、とされています。

高砂親方としては、「こんな大自然の中で治療すれば、朝青龍にとっても精神的にメリットはあるはずだ」ということを説明するために、具体的な例としてそういった話をしたまでだったようです。

マスコミがある一定の意図を持って、事実の一部をつまみ食いして報じる、というのは、確かにこれに限ったことではないと思います。それを踏まえると、この種の騒動の渦中にあった人物の著書というのは、本人の言い分を世間に対して発表し主張する一つの手段としての存在価値はあろうかと思います。

ただ、その一方でこの本の場合、親方本人の言い分を全部鵜呑みにしてよいのだろうかと思いたくなる部分もないわけではありません。

2011年2月の八百長メール事件後、相撲協会は八百長防止策の一環として、監察委員を支度部屋にも置き、力士に対して監視の目を光らせるようになりました。ところが、監察委員として支度部屋に入った高砂親方が、何と漫画を読んでいた、という事実が発覚し、大手の複数の新聞報道にも流れました。

こういう態度を見てしまうと、この親方は大相撲を取り巻く昨今の厳しい状況を本当にわかっているのだろうか、と言いたくなります。この本の中身からは、そういういい加減な姿は見えてこないので、何が真実なのか、ますますわからなくなってきます。


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タグ:大相撲
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昭和大相撲騒動記 大山眞人著 平凡社新書 [相撲本]

この本は、1932(昭和7)年に起こった「春秋園事件」を通じて、またその後の時津風(双葉山)など歴代理事長時代に行われた改革などにも触れながら、現在の大相撲に依然として残っている数々の問題に焦点を当てる内容の本です。

私はこの春秋園事件の概略は以前から知っていましたが、ここまで詳しくその経緯が書かれた本を読んだのは初めてです。またそれ以前にも、新橋倶楽部籠城事件(1911年)や三河島事件(1923年)など、大相撲改革や力士の待遇改善を求める同様の事件があったことを、この本で初めて知りました。

春秋園事件とは、関脇天龍三郎を中心とする出羽海部屋の大関以下関取32名の力士が、東京・大井町の中華料理店「春秋園」に立てこもり、大相撲の改革を訴え、新たな興行団体「大日本新興力士団」を立ち上げるに至ったという、近代大相撲史上最大といってもよい事件です。

そして、協会に残った力士の中からも、力士への待遇や春秋園事件への協会の対応へ不満を持った十数名が、新興力士団とは別に「革新力士団」を立ち上げるに至り、協会は窮地に追い込まれることとなりました。この革新力士団については、私も今まで全く知りませんでした。

当時は協会の運営が極めて不明朗で、また力士の生活も、関取でさえも後援者(いわゆるタニマチ)からのご祝儀や小遣いなしでは、まともな生活を維持できないほど、協会内での地位は極めて低いものでした。

天龍らが相撲協会に突き付けた改革要求案は、次のようなものでした。

一、協会の会計制度を確立されたい。
二、興行時間を改正されたい。
三、入場料を低下して、大衆の相撲でありたい。
四、相撲茶屋を撤廃されたい。
五、年寄制度を漸次撤廃されたい。
六、養老金制度を確立されたい。
七、地方巡業制度を根本的に改められたい。
八、力士の生活を安定されたい。
九、冗員を努めて整理されたい。
十、力士協会を設立し、もっぱら力士の共済制度を確立されたい。

このうち、力士の待遇に関する問題(六、八、十)についてはかなり改善が図られ、十両以上の関取については、現在では月給制も導入され、相応の経済的な安定を得られるようになりました。

しかしながら、相撲茶屋(四)と年寄制度(五)については、実質的に殆ど手をつけられることなく現在に至り、新しい公益法人制度への移行に際しては、そのままでは通らないのではないかともみられています。

天龍たちの興した新団体は、髷を落とし、番付を廃止し、力士を実力別に3つのクラスに分け、その中で総当たり戦を行うなど、当時の大相撲にはない斬新な仕組みを導入し、旗揚げ興行も大成功を収めました。ただ、その後は運営上の困難が色々と重なり、結局5年で解散の結末を迎え、天龍などその時点で引退した力士以外は、再び協会に戻っています。

しかしながら、当時の天龍たちの問題提起は、現在の大相撲にも通じる本質を捉えたものとも言え、その行動力と勇気は素晴らしいと思います。

そして、天龍三郎(本名和久田三郎)自身は、その後は満州国官吏を経て戦後は実業家として成功する傍ら、ラジオの相撲解説者としても活躍し、1989年に86歳で亡くなっています。

この本では、戦後の時津風(双葉山)理事長時代の改革にも触れられています。月給制や定年制の導入、相撲教習所の設立、国技館への椅子席の設置、部屋別総当たり制の導入、協会役員選挙の導入、審判部の設置など、現在の協会はこの時津風改革で土台が築かれたということがわかります。

ここ数年、大相撲は不祥事が相次ぎ、本場所の客席にも空席がかなり目立つ状態が続いています。弟子暴行死事件、大麻事件、野球賭博事件、そして八百長メール事件と、前代未聞の大問題が立て続けに発覚しました。

それに対して、相撲協会は世間の信頼回復、更には時代の先を見据えた有効な手立てを、なかなか打ち出せずにいるように見えます。

年寄株の扱いについては、公益財団法人への認可問題も見据え、放駒前理事長の時代に、協会による買取・一括管理の方向が示されましたが、北の湖現理事長になってからは、それも反故にされつつあるように見えます。

この本は、そんな大相撲の今後のあるべき姿を考える上で、大変参考になる本かも知れません。


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タグ:大相撲
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「悪者扱い」 第十五代時津風親方(山本順一)著 竹書房 [相撲本]

前から気になっていた本を、ついに図書館で発見しました!

副題には「八百長はやった。でも弟子暴行事件はでっち上げられた!」とあります。

ここ20年来、週刊ポストの八百長相撲報道を熟読してきた私としては、この「八百長はやった」という部分は、見逃すわけにはいきません。

この本は、2007年に時津風部屋の弟子暴行死事件で日本相撲協会を解雇された、元時津風親方によって書かれています。

内容的には、前半が元親方の入門経緯と八百長に関する記述、後半は弟子暴行死事件についてページが割かれています。

八百長に関しては、2011年の八百長メール発覚による力士の大量処分についても書かれています。一言で言うと、今回の八百長事件では、元親方の現役当時(主に1970年代)と比べて八百長が余りにも多すぎる、という話です。

元親方の時代の八百長は、いわば単発的で、本当にここ一番でしか八百長はやらず、基本的にはガチンコの世界だったと見て取れます。またその当時の八百長は、対戦する当事者同士とその付け人しか知りえず、親方はもちろんのこと、他の力士にも全く気付かれないものだった、とも語られています。

それが今回の八百長事件では、何人もの力士が星を回し合って、その力士たちの間では半ば公然と取引がされている、いわば馴れ合いの世界になってしまっている様子が浮かび上がっています。

この辺りは、過去の八百長報道や関係者の暴露証言ともそれなりに符合しています。

二子山理事長時代の1991年に、当時の出羽海監察委員長が理事長と共に、力士や親方衆を前に八百長叱責の発言をしていたことは、週刊ポストの記事に加え、テレビ局にも録音テープが流出し明らかになっていますが、その中で「昔の50倍くらいになっている」という発言もありました。

また元横綱輪島の元夫人が週刊現代で、「かつての注射(=八百長)はここ一番に打つからこその注射だったが、朝青龍の注射は(多すぎて)もはや注射とはいえない」というような意味の発言もしていました。

弟子暴行死事件に関しては、当時メディアで報じられていたこととは、かなり違ったことが色々と書かれています。もう少し正確に言うと、当時のメディアが報じなかったことが色々と記されています。

例えば、亡くなった弟子が部屋を脱走した際に、今後相撲を続ける気持ちがあるのかどうか親子でよく話し合って欲しいと親方から父親に伝えていたにもかかわらず、父親がその息子を部屋に連れて戻ってきて、煮え切らない返事を続ける息子をそのまま部屋に置き去りにして帰ってしまった様子などが書かれています。また、亡くなった弟子がたばこを吸っていて、兄弟子たちが注意してもなかなかやめようとせず、兄弟子が暴力をふるって親方の奥さんが止めに入ったことなども記されています。

こうなってくると、何が本当なのかよくわかりませんが、この本の内容はある程度具体性も伴っているようにも思えるので、100%作り話とも言えないように私には感じられました。もしこれが本当だとすると、警察や検察の取り調べやメディアの報道のあり方にまで目を向けなくてはいけなくなります。

この本の残念な点としては、語句の間違いや落丁が多く、また事実の誤りも一部あります。この手の本にはありがちな話とはいえ、いきなり序章の書き出しの部分から間違えるというのは、ちょっとお粗末過ぎます。「元大鳴門親方の『八百長』」は、正しくは「元大鳴戸親方の『八百長』」となります。また73ページに、北の富士が横綱に昇進したのは1973年3月、とありますが、これはどうも琴桜と北の富士を混同しているような内容です。


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霧島一博著 「踏まれた麦は強くなる」 [相撲本]

大相撲の元大関霧島(現陸奥親方)が自らの相撲人生を語っている本です。内容的に96年春場所の引退直前に書き上げられたものと思われますが、一方で出版は96年4月なので引退後ということになり、何とも微妙なタイミングで世に出た格好です。出版元はザ・マサダという会社です。

霧島は入門から関取になるまで7年を要し、更に大関昇進は30歳の時で、トータル15年かかっており、まさに遅咲きの力士でした。優勝は1回で、大関在位16場所ののち関脇に陥落、更には平幕まで落ちて、36歳で引退しています。

霧島は現役当時、和製ヘラクレスともよばれ、ウェートトレーニングで鍛えた鋼のような体格で、軽量にもかかわらず吊りを得意とした力士で、また右からの出し投げも強烈でした。

霧島は太れない体質だったらしく、体重を増やすために卵を1日20個食べていた、というような苦心の様子も書かれています。それでもうまくいかず、三段目の頃からウェートトレーニングを始めて、筋肉で体重を増やしていったとも明かされています。

また、奥さんが霧島の食事管理を徹底していたことは、大関昇進前後から知られていましたが、そのことについてもかなりのページが割かれています。まさに二人三脚、奥さんがいなかったら、大関昇進はおろか、幕内定着も困難だったのではとも思えてきます。ちなみに食事は一日5食だったそうです。

横綱千代の富士に初めて勝った時の様子も書かれています。その取組はネットでも見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=wcucHXU07jI

この本は図書館で偶然見つけたものですが、大相撲をまた違った角度から見ることができる一冊です。
タグ:大相撲 大関

曙太郎著 「横綱」 新潮社 [相撲本]

大相撲の元横綱曙の著書です。2001年9月に出版されています。

図書館で偶然見つけましたが、曙が本を出していたとは知りませんでした。引退したのが2001年の1月ですから、それから程なくして書かれた本です。

内容的には、マニアックな相撲本という感じは殆どなく、人間としての曙にスポットが当てられた内容になっているように思います。奥さんのことや部屋の力士仲間のことなどにも触れられています。

曙が最初は若貴兄弟のライバルとしてのヒール役としてマスコミから位置づけられ、それが時と共に段々と変化し、相撲文化や横綱としての在り方を懸命に学ぼうとする曙の姿勢に、賞賛も入り混じるようになっていった様子が、この本からはうかがえます。曙が古事記の英訳本も読んでいたというのには、驚かされました。

曙が横綱に昇進した当時は、それまでの他の横綱が立て続けに引退してしまって、横綱不在の時期でした。手本となる横綱がいない曙に対して、二十八代立行司・木村庄之助が横綱としての心得を度々諭していたというのは、既に報道で知られていましたが、この本でも触れられています。

また、曙が故障に悩まされている時、曙キラーとして名をはせていた貴闘力が曙に医者を紹介した話も、既に報道されていますが、このことも書かれています。

貴闘力の、あくまで強い曙と対戦したい、という思いからは、「敵に塩を送る」という言葉とは明らかに違う、懐の深さを感じます。本当に相撲が好きでなかったら、こんなことはできないだろうと思います。

これが功を奏したかはわかりませんが、曙は晩年、貴闘力にあまり負けていなかったような記憶があります。

この本は、単行本で218ページ、行間も結構詰まっていますので、有名人が書いた本にしてはボリュームがある感じです。文中ところどころに、背景説明や関係者の発言が太字でまとめて挿入されています。私は出版業界の世界を直接知るわけではありませんが、編集者のまとめ方がとても上手い感じがします。
タグ:大相撲 横綱
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大相撲「八百長」の研究 [相撲本]

2011年2月に大相撲の八百長事件が発覚したのを受けて、その翌月に緊急出版された本です。

著者は田端良彦&相撲愛好会で、フリーのライターやジャーナリストなど数人が名を連ね、更に匿名の協力者もいるようです。出版元は日本文芸社です。

この本は、大相撲の八百長の実態の数々を暴きつつも、一方で「八百長をなくしたら、相撲は相撲でなくなってしまう」などと、なかなか公の場では憚られるようなことが堂々と書かれています。

今までも大相撲の八百長問題に関しては、先駆者である週刊ポストをはじめ、いくつかのメディアが取り上げてきましたが、その殆どが「八百長はけしからん」という論調でした。当たり前といえば当たり前ですが。

この本は、それらとはちょっと違う視点を持って書かれており、かなり特異な存在かも知れません。

八百長相撲の実例については、かつて週刊ポストなどで書かれたものとかなり重なっていますが、昭和30年代の栃若時代の八百長など、他のメディアでも扱われなかった目新しいものも含まれています。

イギリスのブックメーカーが、八百長相撲の存在も傾向も全く知らないがゆえに、オッズの設定をミスして、大金を賭けた日本人の的中者に大損させられたことなども書かれています。これまでの週刊誌報道にはなかった視点です。

2011年初場所番付による各力士のガチンコ度ランキングなるものも掲載されています。八百長事件発覚前の番付なので、八百長で引退勧告を受け土俵を去った力士も載っていますが、その力士たちを見ていくと、ガチンコ度は最高でも中程度でした。

この本の残念な点は、誤字が多いことですね。校正を殆どやっていないか、あるいは相撲を知らない人が校正をして見落としたか、よくわかりませんが、あまりにも誤字が多すぎます。

また休場を「休養」と書いている部分が多く、間違いなのか意図的にそうしているのかわかりませんが、一相撲ファンとしては非常に違和感があります。

なお、この著者が開設しているサイトがあります。
http://chusha.hypernomad.net/index.html


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映像で見る国技大相撲 [相撲本]

DVD付の雑誌で、書店で手に入ります。ベースボール・マガジン社から出ています。つい最近、今年に入って発売されたばかりで、創刊号は特別価格で980円です。第2号以降は1260円になりますが、DVD付でこの価格なら十分お買い得ではないかと思います。

その創刊号は昭和49~50年の特集でした。貴乃花親方の父の大関貴ノ花や、横綱北の湖などがクローズアップされています。舞の海が横綱輪島の黄金の左について誌上で解説しています。

DVDも30分ながら、当時のハイライトシーンは全ておさえられているように思います。北の湖や貴ノ花の優勝シーンはもちろんのこと、史上最高の天覧相撲と思われる、昭和50年夏場所の麒麟児-富士桜戦もしっかり収録されています。二丁投げややぐら投げ、一本背負いなど、めったに出ない決まり手も見られます。千代の富士の幕内初勝利の相撲もあります。また現在相撲解説でおなじみの北の富士の引退当時の映像もあります。

個人的には、昭和50年名古屋場所の金剛の平幕優勝について、もう少し載せて欲しかった感はありますが、これは欲張りすぎかも知れませんね。ホラ吹き金剛として当時話題を呼びましたが、残念ながら誌面でも映像でも、その部分には殆ど触れられていませんでした。優勝パレードで盛んにVサインをしているあたりが、ほんの少しその雰囲気を垣間見ることのできる部分でしょうか。

この場所の金剛は横綱大関を次々と倒し、後半戦は記者たちを前に連日言いたい放題で、かなり注目を集めたようですが、さすがにこの手の特集雑誌にはそぐわないという判断なのかも知れません。そんな金剛も今では二所ノ関親方として還暦を過ぎ、協会の理事にもなっているわけですから、隔世の感がありますね。

第2号は、昭和56~58年の特集で、千代の富士が登場します。第3号は、平成2~4年の特集で、千代の富士、小錦、若貴、曙などが恐らく出てくるでしょう。いずれも楽しみなところです。


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