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板井圭介著「中盆」 [相撲本]

小学館から出ています。大相撲の元小結・板井圭介氏の著書です。「なかぼん」と読みます。

本の副題に「私が見続けた国技・大相撲の“深奥”」とあります。八百長相撲の懺悔本です。中盆とは、八百長相撲の仲介・工作人のことを指すとされています。

出版は2000年8月で、それに先立ち2000年1月には板井氏は日本外国特派員協会で記者会見を行い、八百長相撲の告発を行っています。会見の内容は、当然のことながら海外メディアにも発信されています。

2007年初場所直後に週刊現代が朝青龍などの八百長を告発し、それに対して相撲協会が講談社を訴えて勝訴したのは記憶に新しいですが、このとき板井氏は講談社側の証人として出廷・証言しています。といっても、板井氏本人の現役当時の八百長の実態についての証言で、朝青龍に直接かかわるような話ではありませんでした。

ここ数年でこそ、八百長追及=週刊現代という感じですが、この本が出た前後あたりまでは、八百長相撲といえば週刊ポストの独壇場でした。

八百長を示す隠語とされる「注射」という専門用語を私が初めて知ったのも、週刊ポストでした。おかげで今では「注射」と聞くと、私はお医者さんではなく真っ先に相撲を連想してしまうようになりました・・・。

週刊ポストの報道から発展して出版された本が、この「中盆」を含め3冊あります。今では公共の図書館にも置かれるようになりました。改めて紹介します(出版順)。

1.元大鳴戸親方著「八百長 相撲協会一刀両断」鹿砦社
2.週刊ポスト編集部・編「週刊ポストは「八百長」をこう報じてきた」小学館文庫
3.元小結板井圭介著「中盆」小学館

これらを私は「八百長三部作」と名付けたいと思います。

さてこの「中盆」ですが、読んでみて受けた印象としては、作り話にしてはあまりにも具体的すぎる内容でした。

例えば、八百長には大きく貸し借りと買取の2種類あって、貸し借りの場合は基本的に先に依頼した側が相手に“骨折り料”として20万円支払うそうです。また横綱や大関など、星を返すと黒星が増えて優勝を狙えないので返すことのできない立場の力士は、星を買い取ることになるのですが、その相場は70万円だそうです。

さらには、星の貸し借りの場合、1対1で成立させる場合は単純ですが、A,B,Cの3人が、例えばAがBに負け、BがCに負け、CがAに負け、3人が1勝1敗ずつで星を回し合うこともあるといいます。

これが5人、6人、いやもっと大勢で複雑に星を回し合っていたのが実態のようです。なのでいったん八百長に手を染めてしまうと、そこから抜け出すのは容易なことではないと書かれています。

また、こういった複雑なことをやっているので、誰が誰に星を貸しているのかわからなくなってしまうこともあるようです。対戦する両力士が、今度は自分が負ける番だとお互いに思い込んで土俵に上がってしまい、本気で勝負を決めにいかないためなかなか決着がつかず、結局先に疲れた方が負けたという“迷勝負”もあったと書かれています。支度部屋は大笑いだったようです。

八百長の代金の精算はたいてい巡業などの花相撲(すなわち公式戦以外)の時に行われるとも書かれています。その精算に使われるのが番付表を郵送する時に使う、普通のサイズよりちょっと大きめの封筒だそうです。この封筒を使うと、100万円の束がちょうどすっぽり隠れるとも書かれています。実際に経験した者でないとわからない、かなり具体的な供述と思います。

この本で興味深いのは、八百長をする力士が決して弱いわけではない、と言っている点です。

力士はそもそも他人の星勘定など考えるゆとりがないので、ガチンコで勝てる自信のある相手にわざわざ八百長で負けたりはしないそうです。どうせまともにやっても勝てないなら金をもらって転んだ方が得だ、と相手に思わせるだけの強さがないと、八百長はなかなか成立しないと書かれています。

ですので、たとえ八百長があっても、番付というのはそれなりに実力を反映したものになっている、というようにこの本では主張されています。
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